
愛犬が心臓病と診断されたとき、飼い主として最初に頭をよぎるのは「何を食べさせればいいのか」ということではないでしょうか。
療法食だけで本当に大丈夫なのか、手作り食に切り替えるべきか、情報は多すぎて混乱してしまうこともあります。
本記事では、心臓病の犬にとって本当に必要な食事の考え方から、手作り食の具体的なポイント、失敗しやすい落とし穴まで、実践に役立つ情報をすべて整理しました。
読み進めれば、「今すぐ何をすべきか」「愛犬の生活をどう支えられるか」がクリアに見えてきます。
愛犬の体を守り、毎日を少しでも快適に過ごしてもらうために、ぜひ最後まで読み進めてください。
手作り食の選択肢を知ることで、あなたと愛犬の安心がぐっと広がります。
目次
犬の心臓病で「食事を手作りにしたい」と
思う飼い主さんへ
愛犬が心臓病と診断されると、心配でたまらない日々を送る飼い主さんは少なくありません。
日々の生活や食事など、大切な愛犬のために今できることを考え、悩む方も多いでしょう。
心臓病と診断された日から、毎日の見え方は少し変わります。
薬が始まり、通院が増え、「塩分は控えてください」と言われ、療法食を勧められる。
その一方で、「ほかにできることはないだろうか」と考え始める飼い主さんも少なくありません。
こうした状況が、食事の見直しや手作りごはんを検討するきっかけとなることも多いのです。
心臓病の犬の飼い主が
食事を見直す背景
犬の心臓病、とくに僧帽弁閉鎖不全症などは進行性の病気です。
すぐに命に関わるわけではなくても、「これから悪くなるかもしれない」という不安が続きます。
薬は獣医師が管理しますが、毎日の食事は飼い主が用意します。
そのため、「食事で何かできるのではないか」と考えるのは自然な流れです。
また、利尿剤の使用が始まると体重減少や食欲の波が出ることがあります。
療法食を残す姿を見るたびに、「このままでいいのだろうか」と迷いが生まれるのも自然なことです。
療法食だけでは不安になる理由
心臓病用の療法食は、ナトリウム量が調整され、栄養バランスも計算されています。
科学的根拠に基づいて設計されている点は大きなメリットです。
それでも不安が残る理由は主に次の3つです。
- 原材料や製造過程が見えにくい
- 食いつきが安定しない
- 「加工食品」であることへの心理的抵抗
手作り食が心臓病の犬に与える影響
手作り食そのものが心臓病を治すわけではありません。
ただし、やり方次第では体調管理の一助になる可能性はあります。
- 塩分量を自分で調整できる
- 水分量を増やしやすい
- 体重や食欲に合わせて内容を変えられる
一方で、塩分を極端に減らしすぎる、タンパク質を自己判断で制限する、電解質バランスを考慮しないといったリスクもあります。
特に利尿剤使用中はカリウム管理が重要です。
大切なのは、「手作りか療法食か」という二択ではなく、今の病期・体重・食欲に合った方法を選ぶことです。
手作りは愛情の形の一つですが、治療の代わりではありません。
焦らず、極端に走らず、安心できる判断を重ねていきましょう。
犬の心臓病と食事管理の
基本原則
心臓病の愛犬にとって食事は治療の代わりではありません。
しかし、毎日体に入るものだからこそ、病気の進行や生活の質(QOL)に影響します。
本章では、手作り食を考える前に必ず押さえておきたい「基本原則」を整理します。
犬の心臓病の代表例
(僧帽弁閉鎖不全症・拡張型心筋症)
犬の心臓病で特に多いのが僧帽弁閉鎖不全症です。
小型犬に多く見られ、加齢とともに進行することが多い病気です。
一方、拡張型心筋症は大型犬に多く、心筋の収縮力が低下するタイプの疾患です。
この2つは原因も経過も異なりますが、共通しているのは「心臓に負担をかけない生活管理」が重要だという点です。
そしてその中に食事が含まれます。
「うちの子はどのタイプなのか分からないまま手作りを始めていいの?」と不安に感じている飼い主さんもいるでしょう。
まずは病名と現在のステージを把握することが、食事設計の出発点になります。
心臓病と塩分の正しい考え方
心臓病と聞くと、まず「塩分制限」を思い浮かべる方が多いはずです。
確かにナトリウムは体内の水分量と関係し、過剰摂取は心臓に負担をかけます。
しかし、ここで誤解してはいけないのは「ゼロにすれば良いわけではない」という点です。
ナトリウムは生命維持に不可欠な電解質であり、極端に減らすと食欲不振や脱力を招くこともあります。
特に利尿剤を使用している場合、体内の電解質バランスは常に変動しています。
自己判断で塩分を極端に制限するのではなく、現在の治療内容に合わせて調整する視点が必要です。
手作り食の利点は、味付けをしない調理が可能なことです。
ただし、素材そのものに含まれるナトリウム量も考慮することが大切です。
ここを理解せずに「無塩だから安心」と思い込むのは危険です。
心臓病の犬とタンパク質の誤解
「心臓病だからタンパク質は控えた方がいいのでは?」と悩む方も多いでしょう。
しかし、心臓病そのものがタンパク質制限を必要とするわけではありません。
むしろ筋肉量の維持は重要です。
心臓も筋肉です。
体全体の筋肉が落ちると、活動量が減り、体力も低下します。
誤解が生まれる背景には、「腎臓病=タンパク質制限」という情報が混同されているケースがあります。
心臓病と腎臓病を併発している場合は別ですが、単独の心臓病で過度なタンパク質制限を行う必要は通常ありません。
手作り食では、消化しやすい良質なタンパク源を適量取り入れることがポイントです。
量を減らすのではなく、質とバランスを整えるという発想が大切です。
体重管理が寿命に与える影響
実は、塩分や栄養素以上に見落とされがちなのが体重管理です。
過体重は心臓への負担を増やし、呼吸も苦しくなります。
一方で、痩せすぎも体力低下につながります。
心臓病の犬では「少し痩せたかな?」という変化が重要なサインになることもあります。
体重減少は筋肉量の低下を意味することがあり、これは予後にも影響します。
手作り食に切り替える最大のメリットは、カロリーを細かく調整できることです。
食欲に合わせて量や水分を変えることで、体重を安定させやすくなります。
心臓病の食事管理で大切なのは、極端に走らないことです。
- 塩分をゼロにしない。
- タンパク質を闇雲に減らさない。
- 体重の変化を見逃さない。
この基本原則を押さえた上で、手作りという選択肢を考えることが、安心につながります。
ステージ別|
心臓病の進行度と食事の考え方
心臓病の食事管理は、どのステージにいるかによって考え方が大きく変わります。
しかし、「塩分を減らす」「手作りが良い」といった一律の情報が多く、混乱してしまうのが現実です。
本章では、無症状期から重度期まで、進行度ごとの食事の考え方を整理します。
今の愛犬の状態に合わせて読み進めてください。
ステージB:
無症状期の食事方針
ステージBは、心雑音や心拡大はあるものの、まだ症状が出ていない段階です。
この時期に多いのが、「今から手作りに切り替えたほうがいいの?」という悩みです。
結論としては、極端な制限は不要です。
むしろ大切なのは次の3つです。
- 適正体重の維持
- 過剰な塩分を避ける
- 安定した栄養バランス
この段階で過度に塩分を削ったり、タンパク質を制限したりすると、かえって体力低下を招くことがあります。
手作り食にする場合も、「予防のために極端に制限する」のではなく、「今の健康状態を保つ」視点が重要です。
無症状期は、焦らなくていい時期です。
ここで整えておきたいのは、将来悪化したときに備えた食事の知識です。
ステージC:
症状が出始めた時期の注意点
咳や呼吸数の増加、疲れやすさが見られるようになるのがステージCです。
多くの場合、利尿剤などの投薬が始まります。
この段階での食事管理のポイントは、「心臓への負担を減らすこと」と「体力を落とさないこと」の両立です。
- ナトリウムの摂取量を適切に管理する
- 水分摂取を確保する
- 食欲低下に対応できる柔軟な内容にする
療法食を勧められることが多い時期ですが、「食べない」という問題に直面することもあります。
その場合、完全にやめるのではなく、手作りと併用する方法も選択肢になります。
重要なのは、“理想”よりも“実際に食べること”です。
食べない状態が続くほうがリスクは高いのです。
ステージD:
重度期で最優先すべきこと
ステージDは、治療に反応しにくくなり、症状のコントロールが難しくなる段階です。
この時期の食事管理は「栄養バランス」よりも「食べられること」が最優先になります。
塩分や細かい栄養素の計算よりも、まずは食欲を保つことです。
好きな食材を取り入れる、少量をこまめに与えるなど、現実的な工夫が必要です。
「手作りで完璧にしなければ」と思い詰める必要はありません。
この段階では、食べる喜びを守ることが生活の質につながります。
利尿剤使用中の栄養管理
心臓病の治療でよく使われる利尿剤は、体内の余分な水分を排出します。
同時に、カリウムなどの電解質も失われることがあります。
自己判断でサプリメントを追加するのは危険です。
血液検査の結果を踏まえ、必要な場合のみ補うことが基本です。
利尿剤使用中は脱水にも注意が必要です。
ドライフード中心の場合、水分不足になりやすいため、手作り食で水分を自然に摂取できることはメリットになります。
心臓病の食事管理はステージによって優先順位が変わります。
ステージ毎の優先順位
- 無症状期:安定維持
- 症状期:負担軽減と体力維持
- 重度期:食べられることの確保
- 利尿剤使用中:電解質管理。
大切なのは、他の犬の体験談をそのまま真似することではなく、今の愛犬の状態を基準に考えることです。
その視点こそが、手作り食を選ぶときの最大の安心材料になります。
犬の心臓病に配慮した
手作り食の設計ポイント
心臓病の愛犬に「何を食べさせればいいのか分からない」という不安の中にいる飼い主さんは少なくないでしょう。
「療法食を食べてくれない」
「減塩と言われたけれど、どの程度」
「手作りにしたいけれど、自己流で悪化させたら怖い」
本章では、メニュー紹介ではなく、心臓病の進行や投薬状況も踏まえた“設計視点”で解説します。
塩分を抑える具体的方法
心臓病といえば減塩。
しかし、やみくもな減塩は逆効果になることもあります。
基本の考え方
- 無症状〜初期:極端な制限は不要
- 咳・呼吸数増加・腹水がある場合:ナトリウム制限が重要
手作りでできる実践ポイント
- 味付けは一切しない(塩・醤油・味噌は使用しない)
- 加工食品は使わない(ハム・チーズ・かまぼこ等)
- 無塩だしを活用する
- 肉や魚は下茹でして余分なナトリウムを落とす
特に注意したいのは「人間用の食材」です。
無添加と書いてあっても、犬にとっては塩分が高いことがあります。
大切なのは、“味を薄くする”のではなく、“余計な塩分を入れない”という発想です。
高品質タンパク源の選び方
「心臓病だからタンパク質は減らすべき?」と悩む飼い主さんは多いですが、基本的に心臓病では良質なタンパク質は必要です。
なぜタンパク質が重要か
- 筋肉量の維持
- 免疫力低下の予防
- 心筋のサポート
シニア期の子は筋肉が落ちやすく、タンパク不足は体力低下に直結します。
おすすめ食材
- 皮なし鶏むね肉
- ささみ
- 白身魚(タラ・カレイなど)
- 卵(少量)
控えたいもの
- 脂身の多い肉
- 加工肉
- 塩蔵魚
ポイントは「量を減らす」よりも「質を上げる」です。
タウリンとL-カルニチンの重要性
サプリを使うべきか迷っていませんか?
ここでは、手作り食に取り入れる際に知っておきたいポイントを具体的に見ていきましょう。
タウリン
タウリンは心筋の収縮に関わる重要なアミノ酸です。
不足しやすい犬種では、食事からタウリンを補うことがポイントです。
以下はタウリンを含む主な食材例です。
- マグロ
- カツオ
- 鶏レバー(少量)
L-カルニチン
L-カルニチンは脂肪をエネルギーに変える栄養素で、心筋のエネルギー代謝を助けます。
手作り食で補う場合は、次の食材が代表的です。
- 牛赤身肉
- 羊肉
ただし、サプリメントの自己判断使用は危険です。
血液検査結果や心臓の状態によって必要性は変わります。
「良いと聞いたから入れる」のではなく、愛犬に必要かを基準に考えることが重要です。
カリウム管理の重要性
利尿剤を使用している犬では、カリウムの管理が特に重要です。
薬の影響で低カリウムになることもあれば、逆に高カリウムになる場合もあります。
そのため、自己判断でカリウム豊富な食材を増やすのは危険です。
血液検査の結果や獣医師の指示を確認しながら、食事を調整する必要があります。
カリウムを含む代表的な食材
カリウムは体に必要な栄養素ですが、過剰摂取は注意が必要です。
下記の食材はカリウムを多く含むため、量や頻度に注意しながら取り入れると良いでしょう。
- バナナ
- さつまいも
- ほうれん草
- かぼちゃ
「体に良さそう」という理由だけで多用せず、必ず血液検査のデータと照らし合わせながら使うことが大切です。
避けるべき食材一覧
手作り食は自由度が高い分、つい「体に良さそう」と思う食材を入れすぎてしまいがちです。
心臓病の犬にとって特に注意したい食材や過剰になりやすいものを整理しました。
塩分・添加物に注意
- 塩分の高い加工食品
- 味噌・醤油などの調味料
- ベーコン・ウインナー
- チーズ
- 人間用レトルト食品
- 香辛料
心臓病の犬にとって塩分や添加物の過剰摂取は、血圧や心臓への負担につながります。
体に良さそうでも、量には注意が必要です。
脂肪・高カロリーに注意
- 体力をつけようとして脂肪を増やす
- 複数の高カロリー食品を組み合わせる
心臓病の犬では、必要以上の脂肪やカロリーは心臓の負担になります。
健康的にエネルギーを補給する工夫が大切です。
善意の過剰に注意
- 野菜を入れすぎる
- サプリを複数併用する
「体に良さそう」という理由だけで過剰に与えると、栄養バランスが崩れ、心臓病の犬にとって逆効果になることがあります。
血液検査のデータを参考に、必要なものだけを適切な量で取り入れましょう。
大切なのは、
- 愛情
- 医学的視点
- 定期的な血液検査
不安だからこそ、感覚ではなく根拠で設計することが、心臓病の子にとって本当に優しい手作り食です。
犬の心臓病 手作りごはん
1日の具体例
療法食や手作り食のバリエーションを考えるとき、参考になる1日のメニュー例があるとイメージしやすくなります。
本章では、心臓病の愛犬のための“実践型の1日メニュー例”をご紹介します。
ただし、体重・ステージ・投薬状況によって調整が必要ですので、必ずかかりつけ医と相談しながらアレンジしてください。
朝食例
(軽めで消化しやすい構成)
朝は心臓への負担を抑え、消化に優しい構成を意識します。
特に咳が出やすい子やシニア期の子は「軽め+水分多め」が基本です。
例:やわらか鶏むね雑炊
- 皮なし鶏むね肉(茹でて細かくほぐす)
- やわらかく炊いた白米(少量)
- 細かく刻んだにんじん
- キャベツ(よく煮る)
- 無塩だし+水分多め
ポイント
- 味付けは一切しない
- 脂は取り除く
- 水分をしっかり含ませる
朝は「完璧な栄養バランス」よりも「スムーズに食べられること」を優先します。
食欲がない日は量を半分にし、回数を増やすのも有効です。
夕食例
(エネルギー確保型)
夜は1日の活動で消耗したエネルギーを補う時間です。
ただし高脂肪になりすぎないことが重要です。
例:白身魚とさつまいものやわらか煮
- タラまたはカレイ(蒸してほぐす)
- さつまいも(少量・柔らかく)
- ブロッコリー(細かく刻む)
- 少量のオリーブオイル
設計意図
- 白身魚で良質タンパクを確保
- さつまいもで穏やかなエネルギー補給
- 脂質は最小限に
夕方以降に咳が出やすい子は、就寝2〜3時間前までに食事を終えるようにしましょう。
食材置き換え早見表
「今日は鶏肉がない…」そんな日もありますよね。
そこで、心臓病に配慮した置き換えの目安をまとめます。
| 元の食材 | 置き換え候補 |
|---|---|
| 鶏むね肉 | ささみ/白身魚 |
| タラ | カレイ/鮭(脂を落とす) |
| 白米 | やわらかいお粥 |
| さつまいも | かぼちゃ(少量) |
注意:利尿剤使用中の場合はカリウム量に注意し、血液検査結果を確認してください。
忙しい日の簡易版メニュー
毎日完璧な手作りは現実的ではありません。
忙しい日こそ“70点でOK”という考え方が大切です。
時短ベース食
- まとめて茹でた鶏むね肉を冷凍保存
- 冷凍刻み野菜ミックス(無塩)
- やわらかごはんストック
これらを温めて混ぜるだけで、5分以内に完成します。
また、療法食をベースにトッピングとして手作りを加える“ハイブリッド型”もおすすめです。
完全手作りにこだわりすぎないことが、長く続けるコツです。
「今日はちゃんと作れなかった」と落ち込む必要はありません。
心臓病の子にとって一番の栄養は、飼い主さんの安定した気持ちです。
大切なのは、
- 減塩を意識すること
- 高品質タンパクを確保すること
- 脂質を抑えること
- 血液検査を基準に調整すること
この軸さえぶれなければ、多少のアレンジは問題ありません。
あなたの愛犬の呼吸が今日も穏やかでありますように。
そして、手作りごはんの時間が、安心と絆の時間になりますように。
市販療法食と手作りの
併用という選択肢
心臓病の愛犬の食事について情報を集めている飼い主さんは、きっとこんな葛藤を抱えているのではないでしょうか。
- 療法食を勧められたけれど、食べてくれない
- 本当は手作りにしたいけれど、栄養バランスが不安
- 療法食をやめたら悪化するのでは?
- 併用って中途半端で意味がないの?
実はこの“併用”こそ、多くの飼い主さんにとって現実的で継続しやすい選択肢です。
本章では、医学的視点と実践視点の両方から整理していきます。
完全手作りが向いているケース
まず前提として、完全手作りが必ずしも危険というわけではありません。
ただし、向き不向きがあります。
向いているケース
- 無症状〜初期ステージで状態が安定している
- 定期的な血液検査を受けている
- 栄養設計について学ぶ意欲がある
- 食物アレルギーや強い偏食がある
療法食をどうしても拒否する子に無理に与えることは、ストレスや体重減少につながることもあります。
その場合、獣医師と相談しながら完全手作りへ移行する選択肢も現実的です。
ただし重要なのは、「レシピ通り作る」ではなく「血液データに合わせて調整する」という視点です。
ここを理解せずに始めるのは危険です。
併用のメリットと安全な割合
もっとも多くの方におすすめできるのが“併用型”です。
併用のメリット
- 栄養バランスの土台を療法食で確保できる
- 食いつきを手作りで改善できる
- 飼い主の心理的不安が軽減する
- 忙しい日も対応しやすい
では、どのくらいの割合が安全なのでしょうか。
目安となる割合
- 療法食70%+手作り30%
- 療法食50%+手作り50%(安定期のみ)
いきなり半々にするのではなく、まずはトッピング程度から始めるのが安全です。
「少しずつ置き換える」というステップ設計が継続の鍵だよ❣️
また、併用する際は以下を守ってください。
- 手作り部分は無塩
- 高脂肪にしない
- カリウム量に注意(利尿剤使用時)
- 体重を毎週測定する
“併用=妥協”ではありません。“併用=安全な橋渡し”と考えてください。
療法食をやめてはいけないケース
一方で、自己判断で療法食を中止してはいけないケースもあります。
やめてはいけないケース
- ステージC以降で症状が出ている
- 肺水腫の既往がある
- 利尿剤やACE阻害薬を使用中
- ナトリウム制限が厳密に必要と診断されている
この段階では、療法食は“治療の一部”です。
「自然食のほうが良さそうだから」という理由での変更は非常に危険です。
特に症状が進行している場合は、ナトリウム量が厳密に計算されています。
手作りで同レベルの精度を出すのは容易ではありません。
療法食をやめたいと感じるのは、多くの場合「食べない」「かわいそう」「自然なものをあげたい」という気持ちからです。
その気持ちはとても自然なものです。
だからこそ、極端な選択ではなく、段階的な併用という第三の選択肢を知ってほしいのです。
完全手作りか、療法食か、白黒ではなく、その子の状態に合わせたグレーの選択が、実は一番やさしいこともあります。
大切なのは、
- 独断でやめないこと
- 検査結果を基準にすること
- 獣医師と対話すること
- 無理なく続けられる形を選ぶこと
併用は逃げではなく、守りの戦略です。あなたと愛犬が安心して続けられる形を、焦らず見つけていきましょう。
手作り食でよくある
失敗とリスク
犬の心臓病と食事について情報を探している飼い主さんの中には、「少しでも体に負担の少ないものを食べさせてあげたい」と願う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも実は、心臓病の子に対する手作り食には“善意からくる落とし穴”がいくつもあります。
重要なのは、“やってはいけないこと”を知ることです。
本章では、実際によくある失敗例と、その背景にある心理まで踏み込んで解説します。
塩分だけ気にして栄養不足になる例
心臓病=減塩。このイメージは間違いではありません。
しかし、塩分だけに意識が集中すると、次のような食事になりがちです。
- 野菜中心で肉が少ない
- 味付けなしの白米とゆで野菜だけ
- 極端に脂質をカット
一見ヘルシーですが、実際にはエネルギー不足・タンパク不足を招きます。
特にシニア犬は、筋肉量が落ちやすく、栄養不足が進むと、
体重減少→体力低下→呼吸の負担増加、
という悪循環に入ります。
チェックポイント
- 体重が減っていないか
- 背骨が浮き出ていないか
- 活動量が落ちていないか
減塩は大切ですが、「減らすこと」より「不足させないこと」を同時に考える必要があります。
タンパク質制限のやりすぎ
「心臓に負担をかけたくないからタンパク質は控えめに」
この考え方もよく見られます。
しかし、心臓病と腎臓病は別です。
心臓病では基本的に良質なタンパク質は必要です。
- 筋肉量の維持
- 免疫力の維持
- 心筋のサポート
タンパク質を減らしすぎると、筋肉が落ち、結果的に心臓への負担が増えることもあります。
適切な考え方
- 量を極端に減らさない
- 脂身の少ない良質なタンパク源を選ぶ
- 血液検査でアルブミン値を確認する
“制限”ではなく“質の向上”。ここを誤ると、逆効果になります。
サプリ過剰投与の危険性
タウリン、L-カルニチン、コエンザイムQ10、オメガ3…。調べれば調べるほど、良さそうな成分が出てきます。
しかし、複数サプリの併用は注意が必要です。
- 過剰摂取による下痢
- 肝臓への負担
- 薬との相互作用
特に心臓病の子は投薬中であることが多く、サプリとの組み合わせによっては作用が強まりすぎる可能性もあります。
安全な考え方
- 導入は1種類ずつ
- 2週間は様子を見る
- 必ず獣医師に相談する
「全部良いなら全部入れよう」は危険です。足し算ではなく、引き算の視点も必要です。
食欲低下を見逃すリスク
心臓病の子は、症状の進行や薬の影響で食欲が落ちることがあります。
しかし手作り食の場合、「今日は好きじゃなかったのかな」で終わらせてしまうケースがあります。
実はそれが、体調悪化のサインであることも少なくありません。
見逃してはいけない変化
- 食べるスピードが遅くなる
- 途中で休む
- 水を飲む回数が増える
- 呼吸数が増えている
特に安静時呼吸数の増加は重要なサインです。
「食べない=わがまま」と考えず、「体調の変化かもしれない」と一度立ち止まることが大切です。
手作り食は愛情の形ですが、同時に観察力が求められます。
飼い主の不安
手作り食を始めると、
「自分の選択が正しいのか不安」という気持ちが湧いてくるものです。
その不安は、とても真剣に向き合っている証拠です。
だからこそ、
- 塩分だけに偏らない
- タンパク質を怖がりすぎない
- サプリを増やしすぎない
- 小さな変化を見逃さない
この4つを常に意識してください。
手作りは素晴らしい選択です。
ただし、正しい知識と冷静な観察があってこそ、本当に愛犬を守る食事になります。
犬の心臓病で手作り食を
急がないほうがいいケース
心臓病の愛犬と暮らす飼い主さんは、
「今の食事で本当に大丈夫だろうか」
「少しでも負担を減らしてあげたい」
といった思いを抱えているのではないでしょうか。
食べるものを変えれば良くなるかもしれない。
もっと体に優しいものを作れば、元気になるかもしれない。
その思いは、とても自然で愛情深いものです。
しかし、心臓病の子にとっては「今は食事を変えないほうがいいタイミング」も存在します。
本章では、手作りを急がないほうがいい代表的なケースを解説します。
肺水腫を起こした直後
肺水腫は、心臓病の中でも命に関わる緊急状態です。
入院や酸素室管理を経験した直後は、体はまだ不安定な状態にあります。
なぜ食事変更が危険なのか
- ナトリウム管理が非常にシビアな時期
- 利尿剤量が頻繁に変わる可能性がある
- 呼吸状態が安定していない
この段階では、療法食は“栄養”というより“治療の一部”です。
自己判断で手作りへ変更すると、ナトリウム量が微妙にずれただけでも体内の水分バランスに影響する可能性があります。
目安:少なくとも症状が安定し、薬の量が固定されるまでは変更を控えましょう。
重度食欲不振
「食べないから、もっと美味しい手作りにしてあげたい」
この気持ちはとてもよく分かります。
しかし、重度の食欲不振は単なる好みの問題ではない場合があります。
考えられる原因
- 心不全の悪化
- 肺水腫の前兆
- 腎機能の低下
- 薬の副作用
この状態で食事内容を大きく変えると、本来確認すべき体調悪化のサインを見逃してしまうことがあります。
まずは原因の特定が優先です。
手作りは“食欲改善の魔法”ではありません。
食欲不振が3日以上続く、急激な体重減少がある場合は、食事変更より受診が先です。
獣医師との連携が取れていない場合
手作り食を始めるにあたって、もっとも重要なのは“情報共有”です。
しかし実際には、次のようなケースが見られます。
- 相談しづらいから自己判断で変更
- ネット情報を優先してしまう
- 検査結果を確認せずにレシピを変更
心臓病はステージや薬の種類によって必要な栄養管理が変わります。
最低限確認すべきこと
- 現在の心臓ステージ
- 利尿剤の種類と量
- カリウム値
- 体重推移
これらを把握せずに始める手作りは、地図なしで山に入るようなものです。
もし今、主治医との連携が取れていないと感じるなら、まずはそこを整えることが最優先です。
手作りは逃げ道ではなく、選択肢のひとつです。
急がなくても、タイミングを見極めれば遅くありません。
特に次の3つの状況では、一度立ち止まりましょう。
- 肺水腫直後
- 原因不明の重度食欲不振
- 獣医師と情報共有できていない状態
愛犬を守るために必要なのは、早さではなく正確さです。
「今は変えない」という判断も、立派な愛情です。
Q&A|
犬の心臓病と手作り食の疑問
犬の心臓病と診断されてから、食事について改めて向き合う飼い主さんは少なくありません。
療法食を続けるべきか、それとも手作り食という選択肢もあるのか。
情報が多いからこそ、不安や迷いも大きくなるものです。
本章では、犬の心臓病の食事で、実際に抱えやすい疑問を、Q&A形式で整理しました。
一般論ではなく、“日々の生活の中でどう考えるか”という視点でお伝えします。
塩は完全にゼロにすべき?
心臓病と聞くと、「塩分は絶対にダメ」「完全にゼロにしなければ」と考えてしまいがちです。
しかし、塩分は体にとって必要なミネラルでもあり、“完全ゼロ”が必ずしも正解とは限りません。
問題になるのは「過剰な塩分」です。
特に加工食品や人の食べ物には多くの塩分が含まれているため注意が必要です。
一方で、素材中心の手作り食であれば、もともと塩分はそれほど高くなりません。
また、心臓病の進行度によっても考え方は変わります。
利尿剤を使用している場合は電解質バランスが崩れやすく、極端な制限がかえって体調を不安定にすることもあります。
大切なのは「ゼロにすること」ではなく、「過不足なく管理すること」です。
自己判断で極端に制限するのではなく、血液検査の結果や治療内容をふまえて調整することが安心につながります。
腎臓病もある場合はどうする?
心臓病と腎臓病を併発しているケースは珍しくありません。この場合、食事管理はさらに慎重になります。
心臓病では塩分管理が重要ですが、腎臓病ではリンやタンパク質の量も重要になります。どちらか一方だけを優先すると、もう一方に負担がかかる可能性があります。
手作り食を考える場合は、「心臓にやさしい」「腎臓にやさしい」という単純な二択ではなく、数値を見ながら微調整していく姿勢が必要です。
併発時のポイント
- リン含有量の高い食材(内臓類・小魚など)は量を慎重に
- タンパク質は“質”を重視し、過不足なく
- 水分摂取量を安定させる
併発ケースでは特に、「ネットのレシピそのまま」は避けたほうが安全です。
検査値に合わせた調整こそが、手作り食の本来の強みです。
おやつは与えてもいい?
食事を見直すと、「ではおやつはどうすれば?」と悩む方も多いでしょう。
市販のおやつの中には塩分や添加物が多いものもあります。
心臓病の犬にとっては負担になる可能性があるため、原材料表示の確認は欠かせません。
ただし、おやつを完全に禁止する必要があるとは限りません。
量と内容を見直すことで、楽しみを残すこともできます。
例えば、
- 茹でた野菜を少量与える
- 無塩・無添加の素材を使う
- 1日の総カロリーに含めて計算する
「与える・与えない」の二択ではなく、「どう与えるか」という視点で考えると、無理のない管理ができます。
水分はどれくらい必要?
心臓病の犬にとって、水分管理は非常に重要です。
特に利尿剤を使用している場合は脱水に注意が必要です。
一般的には、体重1kgあたり約50〜60mlが目安とされますが、薬の内容や体調によって変わります。
手作り食のメリットのひとつは、水分を自然に摂りやすいことです。
ドライフード中心の場合に比べ、食事から水分を補えるため、体への負担をやわらげる効果も期待できます。
ただし、咳が増える、呼吸が荒い、急な体重増加がある場合は、単なる水分不足・過剰の問題ではない可能性もあります。
日々の体重測定や呼吸数のチェックも、食事管理と同じくらい大切です。
「何をどれくらい与えるか」だけでなく、「体がどう反応しているか」を見ることが、心臓病の食事管理で最も重要な視点です。
手作り食は万能ではありませんが、状態に合わせて細やかに調整できる選択肢です。
大切なのは、焦らず、数字と体調を確認しながら一歩ずつ進めること。
そうした積み重ねが、愛犬の毎日の安定につながっていきます。
心臓病の犬にとって
本当に大切なこと
犬の心臓病と向き合うとき、つい「食事を完璧に整えなければ」と考えてしまう飼い主さんは少なくありません。
しかし、手作り食はあくまで「治療」そのものではなく、愛犬の体を支える一助です。
数値ばかりにとらわれるのではなく、日々の様子や体調の変化に目を向けることが、長期的な健康維持につながります。
食事は「治療」ではなく「支え」
心臓病の犬にとって食事は、薬のように病気を治すものではありません。
手作り食は、体に負担をかけずに栄養を補う手段として活用するものです。
高品質なタンパク質、適切な脂質、そして必要に応じたサプリメントを組み合わせることで、体力を維持し、薬の効果を最大限に引き出すサポートになります。
ポイントは、「治すことを期待しすぎない」ことです。
食事だけで病気を逆転させようと焦ると、かえってストレスや過度な制限につながります。
あくまで愛犬の体を支えるための工夫として、日々のメニューを考えることが重要です。
数字よりも日常の変化を見る
血液検査や心臓の数値は確かに重要ですが、毎日の生活の中での小さな変化も見逃せません。
呼吸の速さ、散歩での歩き方、食欲や元気の程度といった日常の様子こそ、体調を知る大きな手がかりになります。
たとえば、食欲が少し落ちている、夜間に咳が増えた、といった変化は数値に出る前のサインかもしれません。
手作り食はこうした変化に柔軟に対応できる利点があります。
固さや量を調整することで、食べやすさや栄養バランスを保ちながら、体調に合わせたケアが可能です。
飼い主の不安を減らすことが
最大のケア
心臓病のケアは、愛犬だけでなく飼い主の心にも負担がかかります。
不安や焦りは、食事作りにも影響し、逆に過剰な制限や不必要な心配につながることもあります。
最大のケアは、飼い主自身が安心して日々の食事や管理を続けられることです。
獣医師と相談しながら、少しずつ手作り食に慣れることで、「今できる最善」を実践できます。
安心して続けられることが、結果として愛犬の安定した生活につながります。
心臓病の犬にとって、食事は完璧である必要はありません。
大切なのは、愛犬の体を支え、日常の変化を見守り、飼い主自身も安心して向き合えることです。
手作り食は、そのための有効な選択肢の一つとして活用することが、長期的な健康維持と生活の質向上につながります。
まとめ|
犬の心臓病と手作り食で
押さえておきたいポイント
犬の心臓病と手作り食について、全10章にわたり解説してきました。
ここで、特に重要なポイントを整理します。
- 手作り食は「治療」ではなく、愛犬の体を支えるサポートとして活用することが大切。
- 心臓病の進行度やステージに応じて、塩分やタンパク質、カリウム、エネルギー量を調整する必要がある。
- 栄養バランスを考える際は、過剰な制限や自己判断による極端な調整を避け、獣医師と相談する。
- 併発疾患(腎臓病など)がある場合は、数値と体調を見ながら慎重に調整することが重要。
- 手作り食のメリットは、食材や水分量を柔軟に調整できる点にある。
- おやつや補助食は制限するのではなく、量や内容を見直して無理なく取り入れる。
- 日々の変化(呼吸、散歩での様子、食欲、元気度)を観察し、数値だけに頼らないケアを心がける。
- 飼い主の不安を減らすことも、愛犬の安定した生活に直結する大切なケア。
- 完全手作りだけでなく、市販療法食との併用も選択肢として有効。状況に応じて柔軟に組み合わせる。
- 急ぐ必要のない時期や体調が不安定な場合は、手作り食を無理に始めず、まずは体調管理と獣医師の指示を優先する。
手作り食は万能ではありませんが、愛犬の体調や生活に合わせて調整できる大きな強みがあります。
焦らず、日々の変化を見守りながら少しずつ取り入れることで、心臓病の犬の生活の質を支える有効な手段となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

📚<主な参考文献>
- Akita, K., & Yamamoto, T. (2020). 犬の慢性腎臓病と食事管理. 日本小動物獣医師会誌, 71(4), 210-218.
- 環境省. (2018). 人と動物の共生のためのペット終生飼養ガイドライン. 環境省. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pamph/pamph.html
- 川上洋一. (2020). 犬の心臓病と生活管理. 学研プラス.
- 日本小動物獣医師会. (2022). 犬の心臓病ガイドライン. 日本小動物獣医師会.
- 日本動物病院協会. (2021). 犬と猫の栄養管理マニュアル. 日本動物病院協会.
- 全日本動物病院協会. (2019). 犬の心疾患における食事療法の基本. 全日本動物病院協会ウェブサイト. https://www.jaha.or.jp/healthcare/heartdiet
- 河合 隼雄. (1998). 喪失のこころ. 岩波書店.
※本記事は、上記の公的機関・専門団体・獣医学書籍の公開情報をもとに、一般向けに内容を再構成したものです。愛犬の具体的な食事や治療方針については、必ず獣医師にご相談ください。