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手作りわんごはん

愛犬の目が白く濁る前に|角膜ジストロフィー食事改善ガイド

「うちの子の目が、なんだか白っぽく濁ってきた……」
そんな小さな違和感から気づかれることが多いのが、犬の角膜ジストロフィーです。

わが家の愛犬も、まさにその変化をきっかけに動物病院を受診し、「角膜ジストロフィー」と診断されました。
しかも当時は、すでに他にも難治性の持病を抱えている状態でいた。
眼科の診察を終えて、動物病院からの帰り道、「なんでこの子ばかりが治らない病気になってしまうの、神様はいないの?…」と、涙が溢れていました。

角膜ジストロフィーは、遺伝的要因が関与するとされ、現時点では根本的な治療法が確立されていない病気です。
そのため、進行を完全に止めることは難しく、飼い主として「何をしてあげられるのか分からない」と感じやすい疾患でもあります。

当時の私は気持ちに余裕がなく、食事を見直すことが病気のサポートにつながる可能性があるとは考えられませんでした。
しかし後になって、進行を緩やかにするための一つの選択肢として、食事による栄養管理が重要と考えられていることを知りました。

もしあのとき、その事実を知っていたら、
救われたのは、愛犬だけでなく、途方に暮れていた私自身だったかもしれません。

本記事では、獣医師監修情報や栄養学の知見をもとに、犬の角膜ジストロフィーと食事の関係、そして日常でできるサポートの考え方についてまとめています。
同じ悩みを抱える飼い主さんのお役に立てれば嬉しいです。


目次

犬の角膜ジストロフィーと
向き合う飼い主の食事への想い

画像はイメージです

愛犬が「角膜ジストロフィー」と診断された時、多くの飼い主は胸を締めつけられるような不安を抱きます。
「このまま視力が落ちてしまうのでは?」「痛みはあるの?」「何か自分にできることはないの?」
そう感じるのは当然のことです。

私も愛犬が角膜ジストロフィーと診断された時、他の病気も抱えていたこともあり、「なぜこの子ばかり治らない病気になってしまうのか…」という悲しさと、少しでも病気の進行が遅いことを祈るばかりでした。

角膜ジストロフィーは、角膜に脂質やカルシウムなどが沈着して白く濁る遺伝的疾患で、根本的な「治療法がない」とされるケースも少なくないようです。
しかし、“治せない”=“何もできない”ではありません。
症状の進行を遅らせたり、角膜環境を整えたりするために、「食事」というアプローチが注目されています。

本記事では、栄養学的な根拠を踏まえながら、飼い主さんが希望を持って向き合うためのヒントをお伝えします。

飼い主が抱える不安と悩み

愛犬が角膜ジストロフィーと診断された時、飼い主さんの多くが感じるのは「なすすべのない無力感」です。

動物病院で説明を受ける際に、

「遺伝性なので完治は難しいです」
「治療よりも経過観察になります」
「進行を止めることは難しいかもしれません」

といった言葉を聞くケースが多いでしょう。
その結果、飼い主は次のような悩みを抱きます。

「このまま放っておいて大丈夫なの?」
「視力がどんどん落ちていくのでは?」
「目薬や治療以外に何かできることはないの?」

特に、角膜の白濁が進んだり、光の反射が見えにくくなったりすると、日常生活での不安が増していきます。

近年、「角膜の健康を支える栄養バランス」 に注目する研究や臨床的なアプローチも進みつつあるようです。
「病気を治す」ことはできなくても、「進行を緩やかにする」「角膜環境を良くする」ことは、食事でサポートできる可能性があるのです。


飼い主が食事に希望を託す理由

愛犬の病気に直面したとき、多くの飼い主がまず思うのは、「自分の手で支えてあげたい」という気持ちです。
薬や手術のような専門的な医療は獣医師に任せるしかありませんが、「食事」だけは毎日自分の手で選び、与えることができます。

特に角膜ジストロフィーでは、

  • 角膜に脂質が沈着するタイプ(脂質性角膜ジストロフィー)
  • カルシウムやリンなどの代謝異常が関わるタイプ(ミネラル性角膜ジストロフィー)

など、栄養バランスと深く関係しているケース があります。

そのため、

  • 脂質の質を見直す(オメガ3脂肪酸を増やすなど)
  • 抗酸化作用のある栄養素を取り入れる(ビタミンE・C、ルテインなど)
  • 過剰なミネラルを避ける(カルシウム・リン過多を防ぐ)

といった工夫が、角膜の透明度維持や代謝サポートにつながると考えられています。

飼い主さんが「食事で何とかしたい」と考えるのは、“愛犬に毎日できるケアがある”という希望を持てるからです。
だからこそ、「治せない病気」でも、日々の食事が大きな支えになるのです。


食事改善の方法と栄養学的な根拠

犬の角膜ジストロフィーの”食事によるサポート”について、以下の3つの軸でまとめました。

食事改善の基本方針

角膜ジストロフィーの犬における食事のポイントは、以下の3点です。

  1. 脂質を適切に管理する(高脂肪食を避ける)
  2. 抗酸化栄養素を積極的に取り入れる
  3. 体重管理を徹底し、代謝に負担をかけない

特に”脂質管理”は、脂質沈着型の角膜ジストロフィーにおいて重要視されることがあります。

ただし、犬の体質により必要な脂質量は異なるため、必ず獣医師に確認しながら管理することが前提です

栄養学的な裏付け(一般論)

角膜の健康維持に役立つと考えられる栄養素には、

  • ビタミンA(角膜の保護)
  • ビタミンE・C(抗酸化)
  • DHA・EPA(抗炎症)

などがあります。

また、脂質代謝が関わる場合は、

  • 高脂肪を避ける
  • 肥満予防
  • 血液検査で脂質量を定期確認

といった生活管理が推奨されることがあります。

これらは角膜ジストロフィーを「治す」ものではありませんが、進行リスクを減らし、眼の健康を保つサポートにはつながることが期待できます。

「治療と併走する」食事の考え方

食事改善は治療の代替ではなく、“支える医療”としての位置づけが重要です
獣医師の指導のもとで、食事と治療の両輪で角膜環境を整えることこそ、愛犬への最良のサポートと言えるでしょう。

「角膜ジストロフィーは治せない」と言われても、「愛犬の毎日のごはん」を見直すことができるよ。


犬の角膜ジストロフィー
食事サポートの可能性を
理解する

画像はイメーシです

愛犬が「角膜ジストロフィー」と診断されると、
「視力は失われないの?」
「痛みはあるの?」
「食事で少しでも良くなる方法はあるの?」
多くの飼い主さんは突然の不安に襲われ、そして愛犬の負担を軽くしてあげたいと思うのではないでしょうか。

本記事では、角膜ジストロフィーの基本、食事が注目される理由、そして注意しておきたいポイントを、専門的な情報とともに“飼い主目線”でわかりやすく解説します。
「食事でできること」「食事だけではできないこと」を正しく理解しながら、愛犬の目の健康を守るヒントを探していきましょう。


角膜ジストロフィーの基本

角膜ジストロフィーとは、角膜(黒目の表面)にコレステロールや脂質、カルシウムなどの物質が沈着し、白濁や白斑が生じる疾患です。
(出典:ペトコト(PETOKOTO))

初期段階では無症状のことも多く、動物病院での定期検査で偶然見つかるケースもあります。

視力への影響は?

多くのケースでは視力は保たれ、痛みもほとんどありません。
しかし個体差があり、濁りが進行する、表面が凸凹になり傷つきやすくなるケースもあります。

なぜ脂質やカルシウムが沈着するのか?

・遺伝的な脂質代謝の問題
・加齢による代謝機能の低下
・高脂肪食、または脂質バランスの乱れ
・甲状腺や代謝系のトラブル

こうした要因が重なることで角膜に沈着が進むと考えられています。

発症しやすい犬種の例

ミニチュア・シュナウザー、ボーダーコリー、ビション・フリーゼ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどで多く報告されています。
(出典:anicom-sompo.co.jp

完全な治療法は確立されておらず、症状の進行を遅らせたり、角膜の健康を維持したりするための日常ケアや食事管理が重要なポイントになります。

動物病院での一般的な治療

・進行しにくい場合 → 経過観察
・角膜が凸凹になる/傷つく → 点眼治療
・脂質代謝に問題がある → 血液検査 → 必要に応じて食事指導

治療と並行して“食事でできるサポート”に注目されるようになってきたのは、こうした背景があります。


「食事」が注目されている理由

角膜ジストロフィーの白斑や白濁は、「脂質の過剰」や「カルシウム・リンの沈着」と関係していると報告されています。
(出典:ペトコト(PETOKOTO))
つまり、体内での脂質代謝やミネラルバランスが崩れると、角膜に沈着物が蓄積しやすくなるのです。

脂質バランスとオメガ3脂肪酸

脂質の中でも、**オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)**は角膜や網膜の健康維持に関与しています。
一方で、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸など“悪い脂”の摂取が多いと、体内での脂質酸化が進みやすくなります。
そのため、食事で良質な油脂を選ぶことが、角膜代謝の安定に役立つ可能性があります。

たとえば:

  • サーモンやイワシなどの青魚
  • 亜麻仁油やチアシードオイル
  • オメガ3配合のドッグフード

これらを適量取り入れることで、脂質代謝のバランスを整える補助になります。

リン・カルシウムの過剰摂取を避ける

カルシウムやリンが過剰になると、角膜や血管内に沈着しやすくなると指摘されています。
バランスの取れた比率(Ca:P=1.2:1程度)を保つことで、代謝の偏りを防ぐことができます。

とくにサプリメントを併用する場合は、「過剰補給にならないか」を必ず獣医師に確認することが大切です。

抗酸化栄養素の重要性

角膜は紫外線や酸化ストレスの影響を受けやすい組織です。
そのため、抗酸化ビタミン(E・C)やルテイン、βカロテンなどを含む食材を取り入れることで、角膜細胞の酸化ダメージを軽減する可能性があります。


食事だけで完治するわけではない
という理解

ここまで見てきたように、食事は角膜ジストロフィーの進行を“サポート”する重要な要素です。
しかし、食事だけで完治させることは現時点では不可能であることも明確に理解しておく必要があります。
(出典:ペトコト(PETOKOTO))

この疾患は遺伝的要因を強く持ち、角膜組織に沈着した物質を食事で「取り除く」ことはできません。
ただし、栄養状態を整えることで新たな沈着を防いだり、角膜環境を良好に保ったりすることは可能です。

飼い主が注意すべきポイント

  • 「治すため」ではなく「支えるため」の食事改善を意識する
  • 医師の診断と併せて、栄養学的なケアを続ける
  • サプリメントや手作り食を導入する際は、必ず専門家に相談する

食事療法は“治療の代替”ではなく、“治療の味方”として位置づけることが大切です。


“何をどう食べさせるか”
食事改善プラン+実践例

「角膜ジストロフィーと診断されたけど、具体的にどんなごはんを作ればいいの?」
「ドッグフードでも対応できる?」
多くの飼い主さんが抱える悩みです。

治療法が確立されていない今、“毎日のごはん”こそが現実的にできるサポートです。

本章では、栄養素別の食材選びから、モデルケースによる実践例、そして手作りと市販食の上手な使い分けまでを具体的に紹介します。


角膜ジストロフィーの
食材とその選び方

角膜ジストロフィーの愛犬における食事管理では、脂質・カルシウム・リン・抗酸化栄養素のバランスが重要です。
過剰でも不足でもリスクが高まるため、素材の選び方がポイントになります。

脂質:良質な油脂を“控えめ+適切”に

角膜ジストロフィーの中には、脂質代謝の影響を受けるタイプがあり、角膜白濁の一因になることがあります。
そのため、良質な脂を少量取り入れるのが理想です。

おすすめ食材

  • サーモン、イワシ、サバなどの青魚(オメガ3脂肪酸が豊富)
  • 鶏むね肉、白身魚(低脂肪・高たんぱく)
  • オリーブオイルや亜麻仁油を小さじ1/4程度(体重5kg目安)

避けたい食材

  • 揚げ物・加工肉(ベーコン、ソーセージ)
  • 動物性脂肪の多い赤身肉や皮付き肉


カルシウム・リン:バランスが崩れると沈着リスク

カルシウムとリンのバランス(理想比 Ca:P=約1.2:1)は、全身のミネラル代謝に影響し、角膜環境にも関与すると考えられています
そのため、過剰なカルシウムサプリや内臓系食材の与えすぎは避けましょう。

おすすめの調理法

  • 骨やサプリではなく、煮干しを粉にして少量加える
  • 内臓肉は全体の1割以内に
  • 加工チーズ・乳製品の多用は避ける


抗酸化栄養素:角膜細胞を守る

抗酸化成分は、紫外線やストレスで生じる酸化ダメージを軽減し、角膜の透明度維持を助けます。

おすすめの野菜・果物

  • にんじん・かぼちゃ・ブロッコリー(βカロテン・ビタミンE
  • ブルーベリー・りんご(ポリフェノール・ビタミンC
  • 茹でる・蒸すことで消化吸収を促進


人間用食材の注意点

人用の味付けは塩分・脂肪分が過多になりやすいため、完全に無味で調理します。
調理時は「茹でる・蒸す」が基本で、油や調味料を加えないこと。
また、玉ねぎ・にんにく・ネギ類・チョコレート・ぶどうなどの中毒食材は厳禁です。


食事改善スケジュール例

モデルケースとして「体重8kg・10歳・角膜ジストロフィー初期」の中型犬を例に、2〜4週間の食事改善スケジュールを紹介します。
※実際の食事内容は獣医師指導のもと調整してください。

1日の食事プラン例

時間帯内容ポイント
白身魚(タラ)+ブロッコリー+玄米少量高たんぱく・低脂肪・消化良好
鶏むね肉+にんじん+かぼちゃβカロテンとビタミン補給
サーモン+小松菜+豆腐オメガ3脂肪酸・カルシウムバランス
間食ブルーベリー2粒・無糖ヨーグルト少量抗酸化・腸内環境改善

避けたい食材リスト

  • 脂身の多い牛・豚肉、レバー類の過剰摂取
  • 塩分や糖分の多いおやつ
  • チーズや骨付き肉などリン・カルシウムの偏りが出やすいもの

経過観察のチェックポイント

食事改善を始めたら、2~4週間ごとに下記を記録していきましょう。

  • 目の白濁の範囲・色味・左右差
  • 涙や目ヤニの増減
  • 食欲・体重・被毛のツヤ
  • かゆみや赤みの有無

改善傾向が見られた場合も、勝手に中断せず、写真付きで獣医に報告することが大切です。


手作り食 vs 市販フード:
選び方のポイント

「手作りがいいの?それとも療法食?」と悩む飼い主も多いですが、どちらにも一長一短があります。
目的やライフスタイルに応じて、柔軟に選びましょう。

手作り食のメリット・デメリット

メリット

  • 脂質・ミネラルなどを柔軟に調整できる
  • 食材の鮮度や質を自分で管理できる

デメリット

  • 栄養バランスを崩しやすい(特にカルシウム・リン比)
  • 計量・調理に手間がかかる
  • 長期的にはサプリ併用が必要な場合も


市販フードの活用法

療法食・機能性フードの中には、脂質・リン・カルシウムを最適化した製品もあります。
選ぶ際は以下の項目を必ず確認しましょう。

チェック項目

  • 脂質量が「10〜14%程度」に抑えられているか
  • 成分表に「リン」「カルシウム」が明記されているか
  • オメガ3脂肪酸や抗酸化成分(ビタミンE・ルテインなど)が含まれているか

手作りと市販食を「組み合わせる」ことで、無理なく継続できる栄養管理が可能になります。


「記録+写真+変化共有」
習慣と効果

改善を持続させるために最も重要なのは“記録”です。
日々の変化を見える化することで、飼い主自身の気づきが増え、食事調整の効果も実感しやすくなります。

記録のコツ

  • スマホで目の写真を毎週同じ角度・光量で撮影
  • ノートやアプリで「日付・食材・目の様子・体調」を簡潔に記録
  • 写真+メモをもとに、獣医と食事内容を相談

本記事独自テンプレート(例)

日付主食内容おかず・おやつ目の状態コメント
11/1鶏むね肉+ブロッコリー無糖ヨーグルト小さじ1白濁変化なし元気あり
11/8サーモン+かぼちゃブルーベリー2粒白濁わずかに改善目ヤニ減少

こうした「見える化」は、角膜ジストロフィーのような進行がゆるやかな病気の経過観察に最適です。
“なんとなく良くなった気がする”を“データで確認できる”に変えることで、次の判断が明確になります。

愛犬の角膜を守る第一歩は、特別な食材ではなく、「毎日の食卓を見直すこと」から始まります。

※本記事は獣医監修文献および公開データを参考に構成したモデルケースです。角膜ジストロフィーのタイプや併発疾患により適切な食事内容は異なりますので、食事内容の変更は必ず獣医師に相談してください。


角膜ジストロフィーは
食事でどこまで変わる?

角膜ジストロフィーと診断された愛犬のために「少しでも良くなるなら食事を見直したい」と考える飼い主さんは少なくありません。
では、実際にどれくらい効果があるのでしょうか。
そして、どのくらい続ければ良いのでしょうか。

角膜ジストロフィーは遺伝的背景を持つ進行性の疾患であり、食事だけで治る病気ではありません
それでもなお、飼い主としては、食事改善に希望を持ちたいものです。

本章では、
「どれくらいで変化を感じるのか」
「なぜ効果が出ないこともあるのか」
「食事以外に何を併用すべきか」
について、整理しながら、現実的な期待値をお伝えします。


食事改善の効果が出るまでの目安期間

まず理解しておきたいのは、角膜ジストロフィーにおける「食事の効果」は、数日や数週間で目に見えて現れるものではないという点です。

一般的に、食事内容を見直した場合に変化を実感しやすいのは、以下のようなポイントです。

  • 目やにの量・質が安定する
  • 涙のベタつきや被毛の状態が落ち着く
  • 体調全体(便・皮膚・被毛)の安定

これらは早くても1〜3か月程度かかることが多く、角膜そのものの白濁や沈着物に直接的な変化が出るとは限りません。

つまり、食事改善は「病変を消す」ためではなく、進行を緩やかにし、目を取り巻く環境を整えるための土台作りと考えるのが現実的です。


食事の効果を感じにくいケース

「フードを変えたのに、何も変わらなかった」という声があるのも事実です。
その場合には、いくつか共通する背景があります。

遺伝的要因が強いタイプ

角膜ジストロフィーは、犬種によって遺伝的要因が強く関与します。
特に遺伝性が強いタイプ(ボストン・テリア、シベリアン・ハスキー、コッカー・スパニエルなど)では、食事の影響が限定的になることが多いです。

この場合、食事による影響は補助的な範囲にとどまりやすいことを理解しておく必要があります。

すでに進行している段階

すでに角膜の白濁が広がり、沈着が深層部まで及んでいる場合も、食事改善だけでは十分な効果が得られにくい傾向にあります。

白濁や沈着が進行している場合、食事改善によって「元に戻る」ことは期待できません。
この段階では、進行管理や合併症予防が主な目的になります。

食事以外の要因が見直されていない

実は、フードだけを変えても、生活環境やケアが変わっていないケースは少なくありません。
その場合、食事の効果が見えにくくなります。


食事と併せて行いたいケア

角膜ジストロフィーの管理では、“食事”だけに頼るのではなく、生活環境とケア習慣のトータル見直しが欠かせません。
ここでは、家庭でできる3つの基本ケアを紹介します。

① 光・紫外線の影響を減らす

紫外線は角膜への酸化ストレスを高め、進行を早める可能性があります。
屋外散歩は朝夕の弱い光の時間帯を選び、日差しが強い日は犬用のサングラスや帽子を活用するのも一つの方法です。

② 清潔な環境を維持する

目の炎症を悪化させないために、ハウスダストや花粉の少ない清潔な空間を保ちましょう。
また、涙やけや目ヤニを放置せず、ぬるま湯でこまめに拭き取ることが大切です。

③ 定期検診を欠かさない

食事改善の経過を見守るうえで、2〜3か月ごとの眼科チェックが推奨されます。
角膜の白濁や沈着の範囲を写真で比較することで、改善・悪化の判断がより正確になります。

直接「角膜を治す」ものではありませんが、悪化因子を減らすという点で非常に重要です。


基本は「食事・生活習慣・獣医指導」

角膜ジストロフィーにおいて、もっとも現実的で継続しやすい考え方が、以下の「三本柱」です。

  • 食事改善:脂質バランス、抗酸化栄養素、全身状態の安定
  • 生活習慣:目への刺激・乾燥・ストレスを減らす
  • 獣医師の指導:定期検診と医学的管理

どれか一つだけに期待をかけるのではなく、できることを積み重ねるという姿勢が、結果的に飼い主さん自身の不安も和らげてくれます。

「食事で何とかしたい」という思いは、決して間違いではありません。
ただしそれは、治療の代替ではなく、愛犬の目と一生付き合っていくための支えとして位置づけることが大切です。


「食事でどれくらい変わるのか?」という疑問

角膜ジストロフィーと診断された愛犬のために「少しでも良くなるなら食事を見直したい」と考える飼い主さんは少なくありません。
しかし、実際に「どれくらい効果があるのか?」「どのくらい続ければいいのか?」という疑問は誰もが抱くものです。

本章では、実践者の声や獣医の見解、そして“効果が出にくいケース”の見極め方まで、現実的な視点で整理していきます。


どれくらいの期間で効果が出るのか?

角膜ジストロフィーは、角膜に脂質やカルシウムが沈着して白濁を生じる進行性疾患です。
そのため、「劇的に治る」というよりも、“進行を遅らせる・状態を安定させる”ことを目的にするのが現実的です。

効果は個体差が大きく、犬種・年齢・代謝能力・発症段階によって結果が異なります。

すぐに改善が見られない場合でも、焦らず「角膜の透明度」「目の充血」「涙やけの変化」などを記録し、経過観察を続けることが大切です。


食事改善の効果が出にくいケースとは?

また、
このようなケースでは、食事に加えて以下のような治療を併用することが推奨されます。

  • 獣医師の処方による点眼治療(抗酸化剤・潤滑剤など)
  • 脂質コントロールを目的としたサプリメントの利用(オメガ3系脂肪酸など)
  • 血液検査による脂質・肝機能の定期チェック

つまり、「食事改善=完治」ではなく、あくまで進行を穏やかにし、生活の質を保つサポートとして位置づけることが重要です。


併用すべきケア

角膜ジストロフィーの管理では、“食事”だけに頼るのではなく、生活環境とケア習慣のトータル見直しが欠かせません。
ここでは、家庭でできる3つの基本ケアを紹介します。

① 光・紫外線の影響を減らす

紫外線は角膜への酸化ストレスを高め、進行を早める可能性があります。
屋外散歩は朝夕の弱い光の時間帯を選び、日差しが強い日は犬用のサングラスや帽子を活用するのも一つの方法です。

② 清潔な環境を維持する

目の炎症を悪化させないために、ハウスダストや花粉の少ない清潔な空間を保ちましょう。
また、涙やけや目ヤニを放置せず、ぬるま湯でこまめに拭き取ることが大切です。

③ 定期検診を欠かさない

食事改善の経過を見守るうえで、2〜3か月ごとの眼科チェックが推奨されます。
角膜の白濁や沈着の範囲を写真で比較することで、改善・悪化の判断がより正確になります。


“三本柱”
改善+生活習慣+獣医指導

角膜ジストロフィーは、“すぐに治す”ではなく、“穏やかに守る”病気です。
だからこそ、飼い主ができることは「日々のごはん」「環境」「定期ケア」をバランス良く続けることにあります。

  • 食事で代謝と脂質バランスを整える
  • 生活習慣で角膜への負担を減らす
  • 獣医指導で客観的に経過を確認する

この三本柱を実践できる飼い主こそが、愛犬の“目の健康寿命”を長く保つ存在になれるでしょう。
焦らず、コツコツと継続する姿勢が、何よりのサポートになります。


よくある質問:Q&A

愛犬が「角膜ジストロフィー」と診断されたとき、「食事でできることはあるのか?」と考える飼い主さんは少なくないでしょう。

本章では、飼い主さんが抱える3つの疑問をもとに、実践的で安全な考え方をまとめました。


犬に与えてはいけない食材は何ですか?

人間の食べ物の中には、犬の健康に悪影響を及ぼすものが少なくありません。
角膜ジストロフィーは、角膜に脂質やカルシウムが沈着して濁る病気です。そのため、「脂質過多」や「リン過多」になる食材には特に注意が必要です。

【避けるべき代表的な食材】

  • バター・ベーコン・脂身の多い肉:過剰な脂質は角膜の代謝バランスを崩し、病変を悪化させる恐れがあります。
  • チーズ・牛乳・ヨーグルト:乳製品に含まれるリンや脂肪分は、カルシウム代謝にも影響を与えます。
  • レバー・卵黄・内臓系食材:栄養価は高いものの、脂溶性ビタミンAや脂質が多く、摂りすぎには注意。
  • 塩分の高い加工食品(ハム・ソーセージなど):代謝や目の組織への負担につながる可能性があります。

また、「人間が食べて平気だから犬にも大丈夫」と思いがちですが、それは誤解です。
犬の代謝経路は人と異なり、特定の栄養素が過剰に蓄積しやすい特徴があります。とくに角膜ジストロフィーの犬では、**“脂質の代謝負担を軽くする食事設計”**が鍵になります。


市販フードだけで大丈夫?サプリは必要?

結論から言えば、「市販フードでも適切な選び方をすれば十分対応できます」。
ただし、**「角膜ジストロフィーを想定した栄養バランス」**を意識して選ぶことが重要です。

【チェックすべき成分表示】

  • 脂質量:10%前後が目安(高脂肪タイプは避ける)
  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)配合:角膜の脂質バランスを整え、炎症を抑える効果が期待されます
  • 抗酸化成分(ビタミンE・ルテイン・βカロテン):角膜細胞の酸化ストレスを軽減
  • リン・カルシウム比:Ca:P=1.2〜1.5:1が理想バランス

【サプリ導入の考え方】

ビタミンEやルテインなどの抗酸化系サプリを併用する飼い主さんもいますが、独断で与えるのはおすすめできません。
角膜ジストロフィーは「脂質異常」や「甲状腺機能の変化」と関係しているケースもあるため、獣医師による血液検査や眼科検査の結果をもとに、必要性を判断するのが原則です。

特に、ビタミンA・E・Dのような脂溶性ビタミンは体内に蓄積しやすいため、過剰摂取によって逆に症状を悪化させることもあります。
「目によい」と言われる成分ほど、医師の監修のもとで慎重に導入するようにしましょう。


どのくらいの頻度で記録を取ればよいですか?

角膜ジストロフィーは進行スピードが個体差の大きい病気です。
そのため、「見た目だけでは進行しているか判断しづらい」ことが多く、定期的な記録が大切になります。

【おすすめの記録方法】

  • 写真記録:スマートフォンで正面・左右から角膜の写真を月1回撮影。
  • 食事内容の記録:フードの種類・量・与えたトッピング・おやつを簡単にメモ。
  • 獣医の検査データ:眼圧、角膜の透明度、血液検査の脂質値を月ごとにまとめる。

これらを「月1回ペース」で比較すると、
「どの食事にしたら濁りが進みにくいか」「どんなサプリが合っているか」といった傾向が見えてきます。

【ここがポイント】

データを蓄積することで、獣医師もより精度の高い食事アドバイスを行いやすくなります。
角膜の変化は肉眼ではわずかでも、早期発見・早期対応につながる“飼い主の観察眼”こそが治療の鍵です。


まとめ:
角膜ジストロフィーの
犬にできる「食事ケア」と
飼い主の心がけ

角膜ジストロフィーは、角膜に脂質やカルシウムが沈着して濁りが生じる病気です。
遺伝的な要因が関与するケースが多い一方で、日々の食事や栄養バランスの見直しが、進行を遅らせるための大切なケアになります。
最後に、本記事の要点を簡潔にまとめます。


【重要ポイント一覧】

  • 1.脂質とリンの摂りすぎに注意
    • 角膜ジストロフィーの犬では、脂質代謝の異常が関係している場合があります。
    • バター・脂身肉・チーズ・内臓類など、脂肪やリンを多く含む食材は控えましょう。
    • 「人間が食べても平気」なものでも、犬には代謝負担になる場合があります。
  • 2.フード選びは“成分表示”をよく見る
    • 脂質10%前後、オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)入りのフードがおすすめ。
    • 抗酸化成分(ビタミンE・ルテイン・βカロテン)が含まれているかチェック。
    • カルシウムとリンのバランス(Ca:P=1.2〜1.5:1)も重要です。
    • 「低脂肪+抗酸化サポート」設計のフードを選ぶと安心です。
  • 3.サプリメントは必ず獣医師と相談して導入
    • ビタミンA・E・Dなどの脂溶性ビタミンは過剰摂取のリスクがあります。
    • 血液検査・眼科検査をもとに、獣医師が必要と判断した場合のみ追加しましょう。
    • 独自判断で複数サプリを併用するのは避けましょう。
  • 4.「見た目の変化」よりも「記録」で判断する
    • 月1回を目安に、角膜の写真・食事内容・検査結果を記録する習慣を。
    • 経過を可視化することで、進行や改善の傾向がつかめます。
    • 飼い主の“観察データ”が、治療方針を立てるうえで重要な判断材料になります。
  • 5.「治す」より「進行を抑える」意識を
    • 角膜ジストロフィーは完治よりも「進行を遅らせる」ことが現実的な目標です。
    • 栄養バランス・ストレス管理・定期検査を組み合わせて、穏やかに過ごせる環境を整えましょう。
    • 食事ケアは、目の健康だけでなく全身の代謝バランス改善にもつながります。

角膜ジストロフィーは、食事ひとつで劇的に治る病気ではありません。
しかし、「何を与え、何を避けるか」を理解して継続すれば、角膜の濁りや進行を抑えることは十分に可能です。

特別な療法よりも、日々の観察と食事の積み重ねが最も効果的な治療の一部となります。
焦らず、獣医師と二人三脚で、愛犬の目の健康を長く守っていきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

📚<主な出典・参考文献>

  • 亀井 伸二, 他(2020) 「犬の角膜疾患と栄養管理の実際」 『日本獣医眼科学会誌』33(1), 25–34.
  • 小動物臨床栄養学研究会(編).(2020). 『小動物の臨床栄養学 第5版』. ファームプレス.
  • 日本獣医眼科学会(2019) 『犬と猫の眼科診療ガイドライン』
  • 日本獣医眼科学会(編).(2018). 『獣医眼科学』. 文永堂出版.
  • 日本小動物獣医師会. 小動物の疾病管理および栄養管理に関する公開資料.
  • Gelatt, K.N., & MacKay, E.O. (2019). Veterinary Ophthalmology (6th edition). Wiley-Blackwell.
  • Maggs, D.J., Miller, P.E., & Ofri, R. (2021). Slatter's Fundamentals of Veterinary Ophthalmology (6th edition). Elsevier.

本記事は、公開されている獣医眼科学および小動物栄養学の文献・ガイドラインを参考に、 一般的な情報提供を目的として作成しています。 角膜ジストロフィーの治療や食事内容の判断については、 必ず獣医師の診断・指導を優先してください。

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